成都の街でよく見る面々
成都滞在初日の夜、遅くに到着する私のために、一足先に到着していた同行者のまこまこまこっちゃんとフクダくんが晩酌のおつまみとして買っておいてくれたのがこの「麻辣王子」だ。
中国のスーパーやコンビニにはいろいろな種類のスナックがずらっと並んでいて、右も左も言葉もわからない旅行者を右往左往させるのだが、彼らはその日一日成都の街をぶらついた結果、市内各所に配置された「麻辣王子」の広告にすっかり洗脳されていたため、迷わずにこのパッケージに手を伸ばしたのだという。
最初「この人たちが王子なのかな?」と思っていたのだが、どうもそういうことではないらしい。真ん中は麻辣王子創始人の張玉東(チャン・ユードン)氏。
私は、最初の夜の時点ではまだ広告を見ていなかったので、広告の力に操られてまんまと誘導させられてしまったらしい二人を内心哀れに感じたりしつつ、「麻辣王子」をありがたく食べさせてもらった。
ところがどうだろう。実食してみて「麻辣王子」の美味さに魅了されてしまったのは私の方だったのである。
「微麻微辣」と「很麻很辣」
「麻辣王子」には二種類のバリエーションがある。
麻と辣について説明すると、「麻」は花椒の舌が痺れるような辛さ、「辣」は唐辛子が生み出すヒリヒリする辛さのことだ。
つまり「微麻微辣」は辛さ控えめ、「很」という見慣れない漢字は「甚だしい」とか「とても」という意味なので、「很麻很辣」はとても辛いという意味になる。
「只做地道麻辣 不做甜条」とある。これは「ひたすら本場の麻辣を作ります 甘いお菓子は作りません」という意味だそうで、自分たちはとにかく辛いお菓子だけを作り続けますというストイックな姿勢を表しているようだ。激辛はアイデンティティなのである。
袋に切れ目を入れた瞬間、なんともいえない麻辣の香りが立ち昇って「あ!」と声が出た。楽しかった旅行の記憶がフラッシュバックする。成都の街中では、いたるところでこの香りが漂っていた。
小麦粉を練って作った「辣条」というスティックに真っ赤なスパイスがまぶされている。微麻微辣も很麻很辣もどっちも真っ赤で、言われてみれば很麻很辣の方が赤色が濃いかな?と感じるくらいの違いしかない。
はじめに舌に熱い辛さがジンッときて、次にシビシビと痺れる感覚。唐辛子と花椒の二段構えの攻撃だ!
ただ辛いだけではない。油を吸った硬めのお麩のようなもっちりねっちりとした辣条を噛むと、濃厚な旨みを含んだ油がジュワッと染み出してくる。この旨味と香りが「麻辣王子」を単なる激辛スナックではない、とても情緒のある味にまとめているのだ。
さて、以上は微麻微辣の感想。很麻很辣の方はもう少し覚悟が必要だ。
カッという音が鳴ったような気がした。その麻と辣の暴力の凄まじさたるや、寝ぼけていた全身の毛穴が叩き起こされて一瞬で総力戦体制に移行するようだった。これはまるで食べるサウナだ。
とんでもなく刺激的で舌はやめてくれと言っているような気もするけれど、ついつい食べ続けてしまう。中毒性があるんじゃないかと疑いたくなる。
一袋百円くらいで四川のアイデンティティである麻辣を楽しめるスナック「麻辣王子」。Amazonで買えるみたいなので、辛いものが好きな人にはぜひ試してみてもらいたい。


